こんにちは、日本で一番”敷居の低いアートマガジン”、アートの小道です。
今回のテーマは、印象派の中でも特に有名な画家のひとり、「ルノワール」。
アートに詳しくなくても、名前くらいは一度は聞いたことがあるのではないでしょうか?
この記事では、ルノワールはどんな画家で、どんな作品を描いて評価されているのか?をご紹介します。
彼の人物像や経歴なども交えつつ、はじめてアートに触れる方でも楽しめる鑑賞ポイントを分かりやすく解説していきます!
ルノワールってどんな画家?
ルノワールの基本
ルノワールの本名は、ピエール=オーギュスト・ルノワール(Pierre-Auguste Renoir)。
フランス出身の印象派を代表する画家の一人です。
彼が描くのは明るく温かみのあるもの作品や、幸福感を感じるような作品が多く、「見ているだけで幸せな気持ちになる」絵を描くことで有名な画家です。
プロフィール
名前:ピエール=オーギュスト・ルノワール
出生地:フランス、リモージュ
活動時期:19世紀後半~20世紀初頭
ジャンル:印象派
ルノワールの生い立ち
幼少期から画家を目指すまで
ルノワールは、1841年2月25日にフランスのリモージュで生まれました。
彼の父親は仕立て職人で、家計は決して裕福ではありませんでした。
1844年にルノワール一家はパリに移り住みます。
幼いころから絵の才能を発揮していた彼は、磁器に絵を描く仕事に就きましたが、機械化が進んだことで徐々に手作業での装飾の収入が少なくなります。
ちょうどその頃に、ルーブル美術館に足を運び、フランスの芸術家たちの作品に感銘を受けたことがきっかけで、本格的に美術を学びはじめました。
後に有名になる若き画家たちとの出会い
1862年、ルノワールは名門・エコール・デ・ボザール(フランス国立美術学校)に入学し、画家シャルル・グレールのアトリエで学びます。
そこで、後に印象派を代表する画家となるモネ、シスレー、バジールらと出会います。
彼らとともに戸外での制作に注力し、光や色彩を映し出す「印象派」の技法を習得していきました。
当初はサロン(官展)での評価を得られず、苦しい時期もありましたが、1874年に印象派の第1回展に参加し、ルノワール独自の色彩表現ややわらかな光に満ちた作品が人気を博すようになりました。
晩年は関節リウマチを患いながらも創作活動を続け、1919年に78歳でこの世を去りました。
ルノワールが評価されている3つのポイント
1. 人物画が得意
ルノワールは女性や子供の肖像画をたくさん描いていて、印象派の中でも人物画に優れていました。
特徴的なのが、彼の作品に描かれている女性などは、みんな肉付きがよくてふくよかな人ばかり。
若い時に愛人関係だったリーズ・トレオや、妻のアリーヌ・シャリゴをモデルにした作品もたびたび登場しています。
屋外で肖像画として描かれたものから、森の中で裸婦が寝そべっているような創作品まで様々な作品を遺していて、人間の肌の質感が非常に繊細で美しいと評価されています。
2. 色彩感覚
鮮やかでありながら柔らかい色使いが特徴的で、印象派を代表する巨匠と呼ばれるだけに光の表現が特に優れています。
見るだけで暖かな日差しや木漏れ日を感じられる作品が多く、赤やピンク、黄色、緑などの明るいトーンの色を散りばめたふんわりとした優しい表現が魅力です。
ルノワールの作品を近づいてよく見ると、風景のひとつひとつが非常に細かいタッチの筆づかいで表現されていて、その精密さには毎度驚かされます!
3. 日常の美しさを描く視点
ルノワールの作品は、舞踏会や家族の団欒シーン、子どもの遊ぶ姿など、特別な瞬間ではなく、日常の中にある景色をテーマにしている点が、多くの人から共感や親しみを受けています。
彼ら印象派の作品が世に広まる前は、ポーズを決めた人物を写真のように描く「肖像画」など、屋内で制作するのが当時は当たり前でした。
しかし、そこから外へと飛び出したルノワールたちは、日常の何気ない瞬間や風景を美しく色鮮やかに表現しました。
ルノワールの代表作と見どころ
『ムーラン・ド・ラ・ギャレットの舞踏会』
ルノワールの代表作として有名なこちらの作品。
この絵は、パリのモンマルトル地区にあったダンスホール「ムーラン・ド・ラ・ギャレット」での、日曜の午後のにぎやかな光景を描いています。
当時、労働者や芸術家たちが集まる社交の場として親しまれていて、人々が楽しげに踊ったり、談笑したりする姿が生き生きと描かれています。
木漏れ日が降り注ぐ中で踊る人々の賑やかで柔らかい雰囲気を捉えていて、明るく華やかな色彩で表現されています。
ダンスを楽しむカップルたちや談笑する人々の表情までリアルに描かれていて、当時の社交場の様子がよくわかる一作です。
『ぶらんこ』
さきほどの「ムーラン・ド・ラ・ギャレットの舞踏会」と同じ年に描かれた本作。
実物は縦長の作品で、パリ近郊のモンマルトルのムーラン・ド・ラ・ギャレットの庭で描かれたとされています。
作品の主人公は、ぶらんこの上に立っている若い女性で、伏し目がちな視線で控えめな仕草が女性らしさを引き立てて描かれています。
ちなみに、この女性のモデルはルノワールのアトリエの近くに住んでいたジャンヌという女性です。
彼女の周りには、少女(少年?)と帽子をかぶった男性、さらに奥にはもう一人の男性やカップルなどの姿があり、男性に話しかけられて恥ずかしそうにしているような様子が見て取れます。
ルノワールの作品らしい木漏れ日が差し込み、柔らかい光と影が美しく表現されています。
『イレーヌ・カーン・ダンヴェール嬢』
この作品は、「小さなイレーヌ」という愛称でも知られていて、ルノワールの肖像画の中でも特に有名な作品の一つです。
この肖像画のモデルはタイトルの通り、イレーヌ・カーン・ダンヴェールという当時8歳の少女。
彼女は、フランスの銀行家ルイ・カーン・ダンヴェールの娘で、ルノワールは夫妻から依頼を受けてこの肖像を制作しました。
ふんわりとした明るい茶色のカールヘアーと、青いリボンを頭につけたかわいらしい姿ながら、凛とした表情と澄んだ瞳が美しく描かれています。
とても品のある肖像画ですが、夫妻には不評で、使用人の部屋に飾られていたという話が有名です。
国内でルノワールの作品が観られる美術館
ルノワールの作品を実際に見てみたいという方へ、日本国内でも鑑賞できる場所があります!
印象派の名画を身近に感じられる美術館をいくつかご紹介します。
※時期により所蔵作品が貸出中などのことがあるので、展示作品や営業時間等の詳細は公式サイトよりご確認くださいませ。
ポーラ美術館(神奈川県・箱根)
ポーラ美術館は印象派のコレクションが豊富で、ルノワールを含むモネやセザンヌといったの巨匠たち作品が数点所蔵されています。
所蔵作品:『レースの帽子の少女』、『髪飾り』など
東京都内からも車で約1時間ほどで行けて、公共交通機関の場合は箱根湯本駅からバスで約40分。
人気温泉地だけに温泉旅行とセットで楽しめて、周辺観光も充実している点がおすすめです!
名称 | ポーラ美術館 |
住所 | 神奈川県足柄下郡箱根町仙石原小塚山1285 |
アクセス | 【電車+無料送迎バス】 箱根登山鉄道・強羅駅から無料送迎バスで約8分 【車】 東名高速「御殿場IC」から約25分 【バス】 箱根登山バスで約13分、「ポーラ美術館」下車 |
公式サイト | ポーラ美術館 |
ひろしま美術館(広島県・広島市)
印象派をはじめとしたフランス近代絵画を中心にコレクションを多数展示している美術館で、ルノワールの作品も常設展示されています。
世界遺産である広島の原爆ドームや厳島神社の回廊をイメージした建物の建築がとても美しくて、「ゴッホくん」というマスコットキャラクターがいます。
所蔵作品:『パリ、トリニテ広場』、『パリスの審判』など
広島駅から徒歩約15分と好アクセスで、市内観光の途中に立ち寄りやすい立地です。
名称 | ひろしま美術館 |
住所 | 広島県広島市中区基町3-2 |
アクセス | 【電車】 広島駅から路面電車で「紙屋町東」下車後、徒歩約5分 【車】 山陽自動車道「広島IC」から約30分 駐車場:障がい者等専用駐車場のみ(一般駐車場なし) |
公式サイト | ひろしま美術館 |
大原美術館(岡山県・倉敷市)
日本初の西洋美術中心の美術館として知られる岡山県の大原美術館。
ルノワールの作品をはじめとする印象派の名作が鑑賞可能です。
所蔵作品:『泉による女』
倉敷駅から徒歩約15分、歴史的な街並みに美術館やギャラリーもたくさんある、倉敷美観地区の散策もおすすめです!
名称 | 大原美術館 |
住所 | 岡山県倉敷市中央1-1-15 |
アクセス | 【電車】 山陽本線・倉敷駅から徒歩約15分。 【車】 山陽自動車道の倉敷インターチェンジから約20分。 ※美術館内には駐車場がないため、周辺の有料駐車場を利用。 |
公式サイト | 大原美術館 |
その他:東京都美術館や国立西洋美術館(東京都)
ともに東京・上野公園内に位置する2つの美術館では、ルノワールやモネなどの印象派の大規模な作品展がしばしば開催されます。
都内近郊にお住いの方はアクセス抜群で、近くには上野動物園や国立科学博物館などが点在する文化エリアなので、美術館に足を運ぶついでに色々な過ごし方が楽しめるのが魅力です!
私はお隣の県に住んでいますが、上野までは電車1本で行けて、美術館を楽しんだあとにスタバで買ったコーヒーを公園のベンチに腰掛けて飲んだり、近くのスポットを散策したりといつも満喫しています♪
ルノワールにまつわる雑学
ルノワールとモネの友情
ルノワールとモネは親しい友人で、ともに第1回印象派展に出展し印象派の発展に貢献しました。
1869年には、パリ郊外のラ・グルヌイエール(セーヌ川沿いのレジャースポット)で一緒に制作し、『ラ・グルヌイエール』という同じ風景を描いた作品を残しています。
この作品は同じ風景ながら人物にも重点をおいたルノワールの作品と、水面の光のきらめきを強調したモネの作品とで2人の対比をたのしむことができます。
「ルノワール・ブルー」
正式な美術用語ではありませんが、ルノワールの作品における青色の使い方を指す言葉として「ルノワール・ブルー」という言葉はがあります。
ルノワールは人物画を描く際、肌の血色を引き立てるために影の部分に青を用いることが多く、それによって柔らかく生き生きとした質感を表現しました。
印象派特有の技法としても、黒の代わりに青で陰影をつけることがあり、作品全体を明るく軽やかな雰囲気に仕上げています。
また、彼の作品には青い衣服や小物をまとった人物がたびたび登場し、青を基調とした色彩が入ることで作品の優雅さを引き立てています。
まとめ:ルノワールの幸福の芸術を自分の目で見てみよう
ルノワールは「幸福の画家」とも呼ばれるほど、心温まる優しい作品をたくさん生み出しています。
彼の作品を観ていると、日常生活の中での小さな幸せを見つけることの大切さが学べるような気がします…!
絵画は画面越しに観るのと実物を観るのではまるで印象が変わることが多いので、ぜひご自身の目でルノワールの作品に触れて、その感動に触れてみてください!
あなたのお気に入りの「ルノワール作品」が見つかると嬉しいです。